研究概要

本プロジェクト(滞日調査プロジェクト)では、当面の対象地域を日本国内に絞って、多民族と多世代が構成する望ましい社会システムのあり方を研究課題としました。2023年度から研究成果を追加公開している戦前・戦中期日本の回教研究に関する研究課題は、主に大日本回教協会寄託資料の分析とその評価でした。


具体的には、国民の世代間構成の変動、いわゆる少子高齢化に加えて、諸外国からの政策的あるいは自発的な出稼ぎ労働者や技術・専門職労働者、近年では介護や福祉系の労働者などの移民等の流入過程、社会成員の多民族化、社会構造およびライフスタイルや価値観の変化など、あらゆる世代と地域社会に大きな影響をおよぼす変動が研究の対象となりました。


本プロジェクトは、日本における新たな多民族・多世代社会システムの構築を提案することを目的です。

プロジェクト設置の沿革

プロジェクト設置の沿革

1990年代頃からの外国人登録人口の増加とともに、ムスリムの登録外国人数のみならず日本人ムスリムの数も徐々に増加してきました。イラン・パキスタンなどからの入国者は、出入国管理政策の改定により一時に比べ激減しましたが、研修、留学等の資格による東南アジアからの入国者が増加し、外国人ムスリムと日本人との婚姻なども加わり滞日ムスリム人口全体としては漸増傾向にあります。在留外国人統計などを利用した推計結果によると、2020年末現在でおよそ19万の外国籍のムスリムが住んでおり、更に日本人のムスリム人口を加えると23万のムスリム人口が日本に在住していると考えられます。世界人口の20%以上がムスリムである現実、更には滞日ムスリム人口の漸増という状況からみれば、総合的な実態調査の実施は喫緊の課題でした。


このことから、われわれはフィールド調査を軸に据えて、滞日ムスリムとモスクを対象とする総合的な研究に取り組むことにしました。

目的

主な調査目的は、以下の通りです。

  1. 滞日ムスリムの生活実態の把握
  2. 滞日ムスリムが形成/越境する、ネットワークの解明
  3. 日本社会への適応状況
  4. 日本人社会と外国人ムスリムとの交流実態
  5. 日本社会における多文化共生の探求

以上の5つです。

研究テーマ

日本および東アジア諸国を対象として多民族・多世代社会システム構築の提案を目的とします。現在の研究計画においては、滞日ムスリム・コミュニティを主な対象とします。

研究の現状

本プロジェクトは、2004年度ごろから調査研究を開始し、およそ15年間にわたって、早稲田大学人間科学学術院アジア社会論研究室のメンバーを中心として活動を続けてきました。代表者の定年退職に伴い、2020年度以降は、これまでの活動成果に加えて、最新の滞日ムスリム人口推計やモスクの開設動向など統計的な情報を主に提供していきます。今後は、日本のムスリム等に関するメディア取材への対応状況や、講演などの実施についても情報を提供していく予定です。また早稲田大学図書館が所蔵している大日本回教協会寄託資料、通称「イスラム文庫」に関する研究資料や関連論文なども公開していきます。