第11回 マスジド(モスク)代表者会議 議事録

本報告書は、2019年2月10日に早稲田大学(早稲田キャンパス)で開催された第11回「全国マスジド(モスク)代表者会議―平成の時代を生きたムスリム」の会議録である。本会議は、2009年に「全国モスク代表者会議」として始まり、2012年に名称を「全国マスジド(モスク)代表者会議」と変更して、継続して開催してきたが、第11回をもって、一旦、区切りをつけることとなった。従って、本報告書が、「全国モスク代表者会議」として始まった会議の最後の報告書となる。2009年2月11日に第1回を開催しており、10年間にわたって継続してきたが、滞日ムスリムのマスジド代表者や関係者の方々をはじめ、多くの支援者や参加者の方々に支えられて、恙なく継続できたことは幸いであった。また毎年開催する本会議の運営に携わっていただいた多くの方々にも、御礼申し上げます。ここでは、11年間の歩みを振り返ってみたい。


2009年に開始した「全国モスク代表者会議」は、全国のモスクやイスラーム団体を束ねる中央組織が形成されていない我が国において、滞日ムスリムやモスク同士の交流等をはかる機会の提供や、調査研究の情報収集のために、企画したものであり、中立的な立場にある早稲田大学が呼びかけ役となり、会議を開催することにした。


2009年2月11日に、第1回全国モスク代表者会議「日本のムスリム・コミュニティを語る」を開催した。その100年前の1909年2月には、日本のイスラーム社会草創期に大きな足跡を印したアブドルレシト・イブラヒムが大隈重信と会談した記録があり、ちょうど100年目という節目の年に、日本のモスクやイスラーム団体の代表者が一堂に会して、各地の現状や課題が議論の俎上にのぼった。当時、滞日ムスリム人口は約11万人(筆者推計)、モスクも50カ所以上開設され、ムスリム・コミュニティのプレゼンスが高まってきていた。それに呼応するように、滞日ムスリムにとっては、子ども教育・墓地建設・日本社会との関係などの課題があり、それらを巡る議論が行われた。
これまでの各回のテーマは、以下の通りである。議事録は、第1回から第7回までについては、以下のウェブサイトで公開している。また第8回以降も準備が整い次第、公開する予定である(早稲田大学滞日ムスリム調査プロジェクトで検索下さい。URLは更新中)。


第1回日本のムスリム・コミュニティを語る(2009年)
第2回日本におけるムスリム・ネットワークと日本人ムスリム(2010年)第3回日韓ムスリム・コミュニティの現状と展望(2011年)
第4回東日本大震災と被災者支援活動(2012年)
第5回日本のムスリム、食を語る(2013年)
第6回地域コミュニティとマスジドの将来像(2014年)
第7回ヤング・ムスリムの将来設計学ぶ・はたらく・生きる(2015年)第8回文化の翻訳を考える(有識者会議)(2016年)
第9回多文化共生とムスリム・コミュニティ(有識者会議)(2017年)第10回日本のムスリム・コミュニティを問い直す(2018年)


なお、上記の会議の他に、ヤングムスリムを主体とする会議も、以下のとおり、2回開催した。こちらは、非公開の会議であったが、議事録は公開を予定している。


第1回全国マスジド(モスク)代表者会議・次世代部会(2018年2月)「―若者世代とイスラム、日本―」
第2回全国マスジド(モスク)代表者会議・次世代部会(2018年9月)「ヤングムスリムとムスリム・コミュニティ:ヤングムスリムの居場所から考える」

これまで参加していただいた主要な各地のモスクやイスラーム団体は、以下の通りである。札幌モスク、仙台モスク(書面参加)、大塚モスク、御徒町モスク、インドネシア東京モスク、横浜モスク、戸田モスク、八潮モスク、イスラミック・センター・ジャパン、日本ムスリム協会、富山モスク、金沢モスク、名古屋モスク、東広島モスク、徳島モスク、新居浜モスク、福岡モスク、熊本モスク、別府モスク、鹿児島モスクなど。この他、若者世代のムスリムに加えて、ムスリマの会(女性イスラーム教徒の会)やイスラーム研究団体などの代表者等にも個人として参加いただいた。


さて、第11回の会議では、モスク代表者や関係者やその他のイスラム団体の関係者の方々に加えて、若者世代のムスリムの方々にも、ご参加いただき、多世代間の議論が行われた。具体的には、第1部では、「日本のイスラームの遺産とその継承」と題して、現在のムスリム・コミュニティを担っている中高年世代のモスク代表者の報告を受けて、議論を行った。第2部では、「日本のイスラームの将来構想」と題して、ヤングムスリムの生活と意識に関する調査報告の後に、世代間の活発な議論が展開された。第3部では、新たな試みとして、グループワークを利用した、ディスカッションと全体討論を実施した。詳細については、以下の議事録を参照されたい。


第11回を含め、これまでの会議開催にあたっては、滞日ムスリムの親世代の方々、若者世代の方々をはじめ多くの人たちから多大なご協力をいただいた。改めて、これら沢山の皆様に厚く御礼申し上げ、これまでのご協力について御礼申し上げる次第である。


2020年1月


店田 廣文