「外国人に関する意識調査」 射水市報告書

本報告書は、2011年10月から11月にかけて富山県射水市において実施した「外国人に関する意識調査」の報告書である。滞日ムスリムに関する日本人の意識をアンケート調査によって明らかにするというわれわれの試みは、岐阜市における「外国人に関する意識調査」に次いで2回目となる。前回の報告書でも述べたように、これまで同様の試みがなかったわけではないが、さまざまな分析に耐えうる調査票を用いて、また統計的にも意味のある結果を得ることができる規模での調査は、われわれが実施してきたこれらの調査が国内では初めてであろうと考えられる。

2012年3月現在、日本には、外国人ムスリム約10万人、日本人ムスリム約1万人が居住しているものと推計され、全国各地にモスクも60カ所以上設立されている。ムスリム・コミュニティのプレゼンスはますます高まってきており、昨年3月の東日本大震災後においても被災者支援に活躍したことはメディアで報道された。しかし、彼らが抱える生活に根ざした問題群―教育・墓地・その他日本社会とのかかわり等―は、依然として取り組むべき課題として厳然として存在している。われわれは、2009年度より日本学術振興会科学研究費補助金による調査研究「滞日ムスリムの生活世界における多文化政策の影響と評価」(基盤(C),課題番号21530567)を開始したが、諸課題のうち、滞日ムスリムと日本社会との関わりをとりあげたのが岐阜市調査と射水市調査である。また2012年度にはその関係性に特徴がみられる他地域の調査を加えて、3地点の調査結果を比較分析する予定である。

今回取り上げた射水市の調査対象地域には、後述するように1999年に「富山モスク」が開設され、地域社会の住民と滞日ムスリムとの間に様々な交流や軋轢がある地域だが、ひとまず全体の調査結果から見えてくる交流の程度は限定的であり、否定的な側面が強調されているように思われる。地域社会と滞日ムスリムの間に存在する問題群を確認し、今後の望ましい社会の構想実現に向けて、今回の調査報告書を参照いただき、現在の日本社会と滞日ムスリムとの関係がいかなるものであるのか、具体的に見ていただければ幸いである。なお調査結果の第2段階の分析もすすめており、学会報告や学術論文としてまとめていく予定である。

今回の調査にあたっては、対象地域の自治会関係者の方々をはじめ、射水市役所の政策推進課や市民・保険課の方々には調査準備の過程で大変お世話になりました。また多くの射水市民の方々には、面倒なアンケート調査に快くご回答いただきました。改めて厚く御礼申し上げたいと存じます。

2012年4月
早稲田大学人間科学学術院
店田廣文