日本のムスリム人口 1990〜2020年 RPMJ20号

日本社会とイスラーム社会との本格的な交流は、幕末から明治初期の頃にはじまった。それから一世紀以上が経過し,2010年末には日本に居住しているムスリム人口は、10万を超える規模にまで増加した。その後も増加が続き、筆者の推計によれば、2019年末時点で約23万に達した。一方、国内に開設されたイスラーム礼拝所(モスク)は、戦前には3箇所、戦後の1980年代はじめに至るも4箇所に過ぎなかったが、2021年9月現在、モスクの数は110を越えている。


本稿では、ここ30年間の人口推計の推移を始点(1990年)、中間点(2005年)、終点(2020年)の3時点について提示する。1990年の日本社会においてモスクとして機能していたのは、神戸モスク、都内のバライ・インドネシア礼拝所、アラブ・イスラーム学院の広尾モスクの3箇所に過ぎなかった。しかし、当時は、バブル経済の活況にともなって、イランやパキスタンなどからムスリム労働者が10〜20万人にも流入していた頃であった。
1991年には、ニューカマー・ムスリムらによって、埼玉県春日部市に一ノ割モスクが開設、外国人ムスリムが次第に増加し、その後のモスク建設ラッシュへとつながった。人口増の要因として考えられるのは、在留資格を有する外国人ムスリムの増加である。これに伴って、日本人との結婚、仕事・研究等を契機として、いわば「定住」するムスリムが増加した。また、「定住」するわけではないが、仕事や留学でやってくるムスリムも増加し、中期的に滞在するムスリムが増加したことも大きい。とりわけインドネシア国籍のムスリムの場合は、技能実習資格での来日が増加したのである。


本稿では、1990年から2020年までのムスリム人口を対象としたが、2020年からのコロナ禍によって在留外国人数も大きく影響を受けることになった。因みに、2020年12月末の在留外国人統計を参照すると、在留外国人数は約289万であり、前年の2019年末現在には約293万であったから、約4万人の減少となった。


この報告書では、1990年、2005年、2020年の3時点の日本のムスリム人口に関するデータをより詳しく取り上げる事として、都道府県別、年齢別、在留資格別などのより詳細なデータを提供する事とした。各項目の詳細は、本文を参照していただきたい。
推計は、前稿までと同様の方法でおこなう。主たる資料は、法務省のウェブページにある「在留外国人統計」およびそれ以前の「登録外国人統計」から得られる国籍別・在留資格別の在留外国人・登録外国人数である。これを利用して外国人ムスリムおよび日本人ムスリムの人口について推計した。