イスラーム教徒人口の推計 2013年 RPMJ14号

日本社会におけるイスラーム教徒(以下、ムスリムとする)と日本人との本格的な交流の開始から一世紀以上が経過し,2010年末の日本に居住しているムスリム人口は、10万人を超える規模にまで増加した。国内に開設されたイスラーム礼拝施設(モスク)は1980年代はじめには4つに過ぎなかったが、2014年11月現在、その数は80を越えた。一方、2014年から2015年にかけて、中東における「イスラム過激派」の勢力伸長と同勢力が日本社会に与えた大きな衝撃は、改めて国の内外におけるイスラームへの関心を高めるところとなった。本稿では、先に発表した「世界と日本のムスリム人口2011年」2に掲載したムスリム人口推計を更新して、2013年の世界のムスリム人口と2012年末の日本のムスリム人口にに関するデータを参考資料として提示することを目的とする。

巷間では、2025年のムスリム人口が「世界人口の30%」になるというサミュエル・ハンチントンの『文明の衝突』に述べられた推計がよく引用されてきたが、最近では、様々な統計資料や研究をベースにして、より実状に近いと思われる人口推計の試みが行われている。筆者も、2000年や2006年の世界人口推計を利用して、それぞれ当時の世界のムスリム人口推計を行ってきたが5、ムスリム人口に対する社会的関心も高いことから、2011年に続き、2013年の時点で推計を更新した改訂版を作成することとしたのである。

世界のムスリム人口については、その歴史的な推移と2013年時点の国別ムスリム人口推計等を以下に掲載する。推計方法は、前稿と同じく各国のムスリム人口比率のデータを収集し、国連推計による各国人口を掛け合わせて、国別のムスリム人口を算出した。前稿では各国人口のデータとして国連の「世界人口推計2010年」を使用したが、本稿では「世界人口推計2012年」を使用して、2013年の人口をベースとした推計人口を掲載している。日本のムスリム人口についても、前稿と同様の方法で推計をおこなう。今回使用する主たる資料は『在留外国人統計平成25年版』(財団法人・入管協会)の第1表に記載されている国籍別・在留資格別の在留外国人数である。この表には、2012年末現在のデータが掲載されており、これをもとに日本に住んでいる外国人ムスリムおよび日本人ムスリムの合計人口について推計した。

なお、本稿では人口推計の概要を提示することを目的としており、推計結果の内容についての解説などは最低限としたことをお断りしたい。前回の推計から2年しか経過していないということもあり、推計結果を見る限り、世界のムスリム人口をめぐる状況に、大きな変化は観察されないといって良い。

一方で、日本のムスリム人口推計については、後述するように推計人口が2年前と比べ、減少している事、依拠した統計表の内容に若干の変更が生じていることもあり、若干詳しく言及する。本稿の最後には、2025年と2050年の世界のムスリム人口推計を参考データとして掲載した。なお、今回は2013年の概要を報告しているが、各国のムスリム人口比率については2011年時点のデータを使用しているため、ムスリム人口比率について再検討の必要があることを付言しておきたい。