日本におけるイスラーム系宗教団体とコミュニティ(論文)

世界のイスラーム教徒(ムスリム)人口は2013年末には16億(約22%)に達し、今世紀末には世界最大の宗教人口を擁するものと推計されており、人口のみならず政治・経済・社会・文化の各領域においてイスラームの持つ意義は格段に大きくなっている。
一方で、日本社会においては、「マイノリティの中のマイノリティ」と言われてきた滞日ムスリムであるが、1990年前後から在留人口の増加が顕著で、2016年末現在、外国人ムスリムと日本人ムスリムをあわせたムスリム人口総数は約17万となり、日本人口の0.1%を超える規模にまで成長している(店田2018)。さらに近年の滞日ムスリム・コミュニティの発展と社会的活動の活性化は、地域住民との邂逅あるいは軋轢を生じさせるなど、地域社会における「共生」も新たな課題となってきていることから、日本のイスラーム系宗教団体や滞日ムスリムの諸活動の実態を把握することには、重要な意義があろう。


本稿では、特集「宗教とコミュニティ」に則って、イスラームとコミュニティを主題に取り上げる。その際、筆者は次のような2つのサブテーマを設定することとした。第一に、日本の「イスラーム系宗教団体」が「滞日ムスリム・コミュニティ」において果たしている役割を検討する。第二に、「イスラーム系宗教団体」と日本の「地域コミュニティ」の関係について、その現状と課題について論ずる。